てっきり東京は電車ですぐだと勝手に思い込んでいた琉海は着いた先が飛行場だったことに驚いた。

「飛行機に乗るんだ 」

「飛行場に来て他になにに乗るんだよ」

 東京がそんなに遠いとは思わなかった。

 鳥が休んでいるように静かに飛行機が並んでいるのを琉海は眺める。

 もうあの優しい男の人には2度と会えないかも知れない。

 琉海は東京に行ってもときどき浜に戻って来て男を探そうと思っていたが、飛行機に乗る距離となるとそう簡単に戻ってこられるものではない。

 こんなことになるんだったら、もっとちゃんと探しておけばよかった。

 琉海は膝に乗せたバックを抱きしめた。

 中には男が着せてくれたコートが入っていた。

「どうした、おまえ飛行機が怖いのかよ、やけに静かじゃん」

 大冴がアイマスクをずらし琉海を垣間見る。

「そうじゃない」

 機内にアナウンスが流れる。

 離陸が少し遅れるらしい。

 大冴は小さく舌打ちするとスマホを取り出した。

「未來が迎えにくるって言ってたからさ」

「迎えに?」

 そんなにすぐにもう1人の王子候補に会えるとは思わなかった。

 そうだ。

 あたしは陸の王子と恋をしなければいけないんだ。

 他の男を探している場合じゃない。

「未來ってどんな人?」

「大学んからのダチ」

 そういうんじゃなくてさぁ、容姿とか性格とか。

「苗字が同じでさ、ダブルたちばなって呼ばれてた。俺は木へんの橘で未來は立つの花の立花だけど」

「へえ」

 琉海は興味なさげにうなずく。

 そんな情報どうでもいいんだけどな、同じ苗字とか。

 同じ苗字?同じたちばな?

「うっそ」

「うそついてどうすんだよ」

「うそうそうそ!」

 立花未來、未來立花、未來、M!

 M.TACHIBANA

「ばんざーい」

 琉海は両手を大きく頭の上に上げた。

 それを繰り返す。