「おまえ、そこで何やってる!」

 聞き覚えのある声がした。 

 声の方を振り返ると灯台男がキッチンの入り口に立っている。

「ああっ、やっぱりさっきのおまえだな。なんでおまえがここにいる。どうやって入ったんだ」

「なんで灯台男がここに」

 ここはあの優しい男の家ではないのか。

「ここは俺の別荘だ」

 灯台男は食い散らかされほぼ空になった冷蔵庫を見て激怒した。

「おまえ俺の食い物を。不法侵入と窃盗で警察に突き出してやる」

「お巡りさんがあたしをここに連れて来てくれたんだよ。ここで働いてるって言う女の人がここで待ってろって」

 畜生あいつはもうクビだ、と灯台男はぶつぶつ文句を言いながらポケットからスマホを取り出しどこかに電話をかける。

 苛ついた声で何やら話しをしながら時々怒鳴ったりする。

 琉海はその間も冷蔵庫に残った食べ物を物色しようとした。

「おいおまえ!」

 怒鳴られて手を引っ込める。

 いつの間にか電話を切った灯台男が琉海を血走った目で睨んでいた。

「畜生、事件性がないから警察では引き取れないだとよ。なにが痴情のもつれだよ。俺はおまえなんか知らねぇっーの」

 男は乱暴にソファーに寝転がると頭を抱えた。

 とても残念だがここはあの優しい男の家ではなくこの灯台男の家みたいだ。

「ねぇ、橘って人この町に他にもいる?」

 灯台男は頭を抱えたまま動かない。

 無視かい。

 どうする琉海。

 あの優しい男の人を探したいがお巡りさんでも探せなかったのだ。

 これから自力で探す?

 さっきテレビで見たが人間の世界は結構ヤバイみたいで、女ひとりで路頭に迷うのはかなり危険だ。

 バイクでひったくられたり、誘拐されたり、無期懲役になったりしたら大変だ。

 陸の王子を見つけ出すまでは、綺麗な体でいなければいけない。

 残念だが今頼れる人間は目の前の灯台男しかいない。