「明日からは真人の写真を持って聞いて回るか」

 大冴の言葉に未來がうなずく。

 大冴が2階に駆け上がる後を未來が続く。

「琉海ちゃんも一緒においで」

 大冴が寝室の扉を開ける。

「あたしも入ってもいいの?」

 前に立ち入り禁止と言われていた部屋だった。

「ああ、それにここは元々真人の部屋なんだ」

 寝室にはたくさんの写真が飾られていた。

 それは生前の真人が飾った写真というより、両親が真人の死を悼んで飾ったと思われるものだった。

 部屋は丸ごとそのまま祭壇のようだった。

 大冴と未來が持ち出す真人の写真を選んでいる間、琉海は額縁に入れられた大きな写真の前に立っていた。

 等身大の大きさまで引き伸ばされた写真の中の真人が琉海に微笑みかける。

「この人が真人なの?」

 琉海の声が震える。

「そうだよ琉海ちゃん、どうかした?」

「この人が真人なの?」

 大冴が振り返る。

「どうした琉海」

 琉海は何か言おうとするが声が出てこない。

「この人が……」

 写真の脇に1枚のポストカードがピンで留められていた。

 真人が旅行先から両親に宛てたものだった。

 見覚えのある筆跡。

 今でも琉海が持っている紙ナフキンに書かれた文字と同じ。

「な、なんでもないよ、兄弟なのに大冴と全然似てないね」

「なんだよ、真人の方がイケメンだって言いたいんだろう」

「そ、そんなこと……あるよ」

 琉海の冗談で大冴と未來が笑う。

 さっきまでの緊張した空気が少しだけ和む。

 また真人の写真を選び始めた2人をおいて琉海はそっと部屋を出た。


 外に出るとしっとりとした冷たい空気が琉海を包む。

 琉海は浜辺へと走った。