「俺は首の後ろに星型のアザがある奴を知ってる。きれいなくっきりとした星型だった。間違いない、なんども子どもの頃から見てたからな」

「それって……」

 未來はまさかといった顔をする。

 大冴はそれに応えるようにうなずいた。

「真人だ」

「ま、ひと?大冴のお兄さん?」

「そうだ、死んだ真人には確かに首の後ろに星型のアザがあった」

 もしそれが本当なら、もしすでにこの世にいない真人が陸の王子だとしたら。

 自然と3人は町医者に答えを求める。

「わしもそこまでは分からん」

 町医者は渋い顔をした。

 真人。

 彼が本来琉海と結ばれるはずの陸の王子だったのか?

 すでに死んでしまっている王子を探して琉海は陸に上がってきたというのか?

 いったい何のために?

「で、でも」

 琉海は深海の魔女が言っていたことを思い出した。

「深海の魔女は陸の王子に短剣を預けるって言ったよ」

「って、ことは陸の王子は生きてるってこと?」 

 未來は大冴を見た。

「いや、真人は死んだ」

「でも、海に流されて遺体はあがってないよ」

「それだったら律だって」

 そのとき未來のスマホが鳴った。

 未來はスマホの画面を見て首をかしげ、ちょっと、と部屋を出て行く。

 琉海はその後ろ姿を見ながらしみじみと胸を撫でおろした。

 未來を殺すつもりなど最初からなかったが、未來を陸の王子だと誤解したままでなくてよかった。

 それにもし、死んだ真人が陸の王子で、もしこのまま何もしなくても琉海は人魚に戻ることができるとしたら。

 琉海は大冴を見た。

 大冴は人魚になって自分と一緒に海に行ってくれるだろうか?

 自分のために陸にある全てを捨ててくれるだろうか?

 難しそうな顔をして黙り込んでいた大冴が琉海の視線に気づき顔を上げた。

「なに?」

「ううん……」

「なんだよ」

「なんでもない」