未來は琉海の話を聞き終わるとずいぶんと長い間黙っていた。

「なるほど」

 腕組みをした未來は何度もひとりうなずき、顔をあげた。

「信じるよ、琉海ちゃんの話、全部、それで陸の王子は見つかったの?」

 未來が1番の陸の王子候補であることはまだ話せてなかった。

 言えなかった。

「陸の王子には悪いけど、王子に死んでもらって大冴が人魚になればめでたし、めでたしじゃん、な、大冴。大冴はどのみち琉海ちゃんを嫌いになんてなれないんだから、人魚になるしかないだろ」

 大冴が何か言おうとしたときそれを遮ったのは町医者だった。

 琉海が止める間もなかった。

「陸の王子は首の後ろに星型のアザがある男や」

 琉海と未來の目が合う。

「えっ……」

 未來は自分のうなじに手をやる。

 琉海は未來から目を逸らした。

「だから琉海ちゃん、前に僕のタトゥーのことを」

「でも、それだけが見分ける方法じゃないから」

「いいや、それが1番の証拠や、星型のアザは陸の王子に押された刻印や」

「じゃあ僕が死ねば、琉海ちゃんも大冴も助かるってこと?」

 その場が静まり返った。

 さすがに町医者も何も言わなかった。

「待て」

 沈黙を破ったのは大冴だった。

「たぶん未來は陸の王子じゃない」

 確かに未來の星型はタトゥーでその下にあるアザが星型であったかどうかはもはや確認できない。

 それにもしアザがきれいな星型だったらその上からまた同じ星型のタトゥーをするだろうか?

「でも僕自身、それが星型じゃなかったとは断言できないよ」

 じいさん、と大冴は町医者の方を見た。

「すでに陸の王子が死んでいる場合はどうなる?琉海も俺も死ぬことはないんじゃないか?」

 大冴の発言にみな驚く。

 陸の王子がすでに死んでいる?そんなことがあり得るのだろうか?

「どういうことだよ、大冴」

 未來が訊いた。