もしかしたら死んだ律が大冴にこの石を選ばせたのかも知れない。

 真実を見抜けと、これ以上化け物に騙されるなと。

「だって本当のことを言ったけど大冴信じてくれなかったじゃん。あたしは陸の王子を探しにきた伝説の姫だって前に話したでしょ」

 大冴ははっと短く笑った。

「そんな話信じるわけないだろ」

「最初陸の王子はあたしが助けた男だと言われていたからあたし探してたんだ。あの嵐の日に助けた2人の男たちを。大冴言ってたよね、あの時誰かに助けられたような気がする。って、あれあたしだよ、だって変じゃん、大冴と未來だけ助かって律だけ死んだのって」

「それは律だけヨットに残されて」

「海に投げ出された方が助かったって?」

「ヨットが沖に流されたから」

「あの日、律は白い服を着てたよね。彼女あたしが大冴と未來を助けるのをヨットから見てた」

 大冴の顔色が次第に青ざめていく。

「なんでおまえがそんなこと知ってるんだよ」

「だから言ってるじゃん、あたしが大冴と未來を助けたんだって」

「冗談はもう止めろ、あの嵐の海でおまえみたいな細い女が男2人を助けられるわけないだろ」

「平気だよ、泳ぎは得意だったもん。あたし律に見られたんだ。本当のあたしの姿を」

 大冴の目の奥が光った。

「おまえの本当の姿ってなんだよ」

「だからあたし律を助けなかった。今にも水に呑まれるヨットの上に律を1人置き去りにしたんだ。陸の王子と恋に落ちなきゃいけないのに女は邪魔でしょ」

「俺の質問にちゃんと答えろよ、つかおまえ今日なんかおかしいぞ。本当は今日これから約束してたドライブでもって思って来たけど、やめたやめた」

「大冴」

 琉海は静かに言った。

「あたしは人間じゃない、あたしは海から来た」

「どう言うことだよ?」

「それが真実だから」

「人間じゃなかったらおまえは一体なんなんだよ」

 琉海は深呼吸をした。

「人魚」