とは言ったものの、自由に恋するってこれからどうしたらいいものか。

「これください」

 長いことアクセサリーを選んだいた女性がペンダントを手に取った。

 加工なしでハート型に見える珍しいピンク珊瑚で今朝姉たちから仕入れたものだった。

「これをお守りにしてずっと好きだった彼に告白するんです」

 おつりを受け取る女性ははにかみながらそう言った。

 告白。

 そうだ告白だ。

 あたし大冴に告白しよう!

 そう思ったら琉海はいてもたってもいられなくなった。

 これから大冴のところに行こう。

 客足が途絶えた隙に手早く店じまいをしているとぬっと長い影が琉海の手元を覆った。

「おまえまだいっぱい売れ残ってるじゃねぇか」

 茶々丸が喜んで琉海に飛びつき頬を舐める。

「大冴、これから大冴に会いに行こうと思ってたんだ」

「なんだよ俺に会いたくて仕方なかったのかよ」

 大冴は意地悪く笑った。

「うん、そうだよ」

「なんだよおまえ、さては俺のこと好きになったんだろう」

「うん」

 大冴の顔から笑いが消えた。

 それとは対照的に琉海は顔いっぱいに笑みを浮かべる。

「おまえますます頭がおかしくなったか」

「あたし大冴のことが好き」

 琉海と大冴の間を茶々丸が行ったり来たりする。

「だから今度デートしよ、ね大冴」

 ありえねえ、そう一言言うと大冴はくるりと向きを変え歩き出した。

 琉海は大冴を追いかける。

「えー、なんでなんで」

「あのなー」

 大冴は立ち止まり琉海を見下ろした。

「俺は彼女なんて作る気はないんだよ。この前も言ったろう、俺には律しかいないんだ」

「じゃあなんであたしを見に来るの?」

「それは……、とにかく俺は律以外の女は考えられない」

 大冴は琉海の足元でしっぽを振る茶々丸を抱きあげた。

 大冴の腕の中で茶々丸が琉海の方に行きたくて暴れる。

「それでもいい。それでもいいよ 」

 あたしにはどうせあと1年も時間がない。