あの頃は敬語だったというのに。
「りなまる!これ1卓ー」
「はーい」
キッチンから続々と出てくる料理を次々と運んで行く。
季楽里はここらへんでも古い居酒屋で、まぁ常連さんがよく来る。
新規客も口コミなどを見て来るもんだから週末ともなれば店内はてんやわんやとなる。
ヨッシーは外でキャッチをせずに中に入ってほしい時もあるくらいだ。
やまちゃんに渡された刺身を持っていけば、
「よっりなちゃん!」
「小林さん!」
常連さんがいて自然と口元が緩むのがわかった。
「週末は混んでるから平日に来たよ」
「こないだはバタバタですみませんでした」
「お店が繁盛してることは良いことだよー」
「ははは、ありがとうございます」
雰囲気の良い小林さんとお話をしつつ、新しくオーダーされたビールの伝票をキッチンへと運ぶ。
すぐに辞めようと思っていた副業もなんだかんだで辞めないのはお客さんが良い人たちばかりっていうのも理由のひとつなんだろうな。
