「ヨッシー、おはよー」


急行も止まる大型駅の改札をくぐり抜け、エスカレーターを降りて右。

まっすぐ行けばキャッチをしている金髪が自販機の明かりに反射してキラリと光った。


「あ、おはよ、りなさん」

「…やっぱり金髪の方がいいね」


まぁ身長も高くもなく低くもないヨッシーはつい先日大不評だったオレンジから金に髪色を変えた。

…うん、私もこっち派だな。
こんなに金髪が似合うのにもはや何故オレンジ頭にしたのか分からない。


「そ?凛さんにも言われるんだよなー」

「はは、凛ちゃんが一番オレンジ頭に文句言ってたもん」

「違うって。オレンジ頭はやまちゃんにもらった染め粉で染めたのー」

「やまちゃん?」


ぶーと口を突き出したヨッシーはそこまで言って「あ、そこのお兄さん」と、本来の業務を思い出したように遂行する。

ヨッシーはフリーター。
確か歳は22歳。ちゃんと見たらイケメン。私の方が歳上だからってわざわざさん付け。やめてって言っても直らない。直す気もない。
意外と律儀な奴。

中心で騒ぐタイプではないけれど、やっぱりヨッシーのキャッチでお客さんはよく店に入ってくる。

人の懐に入るのが上手いのかなんなのか。

そんなヨッシーと私の働く季楽里(きらり)は古びたビルの5階にある。