彼と別れ、研究室に戻り、様子をみると

『あーーー!』

私は一人で机にもたれ掛かった。実験やり直しだからだ。
超音波にかけていたビーカーが不安定だったらしく振動で倒れて、水浸しになっていた。

やり直すのは実にめんどくさいが、正しい結果を出すためには仕方ない。

私は彼に合う前にしたセッティングをもう一度行うことにした。



「おつおつー実験はかどってるー?」

彼女は同じ研究室の水瀬マキだ。白衣を着崩し、大人っぽくてアイドルのような姿をしている。

『ある意味はかどってまーす。やり直しでーす』

あちゃー…やらかしたな、と話していると、また一人やって来た。


彼は榊幸人、ユキと呼ばれている。どちらかといえば小柄で髪はふわふわとしている。かわいい系だ。年下に見えるが同い年である。

ユキというニックネームは、新歓でマキが勝手に呼び出し、それが定着して皆に呼ばれるようになった。
彼はえらくそれを気に入っている。



「あぁーやっばい、今日で終わらせられない!…うぁぁ!」

彼が持っていた空の段ボールの束がバサバサと落ちる。

「んもう!何やってんのユキ!!」

「うわぁぁ!マキさんっ」


私はマキが近づくとあからさまに動揺するユキにニヤニヤしながら、タイマーをセットした。