私はコーヒーを飲みながら海辺にくるのが日課になっていた。
青く広いここの海をみると、大抵の悩みが小さく感じる。

遠くに、自撮り棒で海をバックに写真を撮っている観光客たちがいる。

地元の人と思われるのは、砂遊びに来た小さな子どもの家族連れや、トレーニングで走っている人だが、この辺りにいる人は、大体近くの温泉街に泊まりに来ていると思われる観光客だ。


津久見くんもこの海を見て育ったのだろうか。
この海を毎日当たり前のように見ていたら、特別綺麗でもないのだろうか。

海なしの街の近くの、グレーがかった日本海の荒波とか、ゴミだらけの海を見て育った私から見れば、アクアマリンやサファイア級に見えるのだけれど…


そんなことを今日もぼーっと考えながら、ふと空に目をやると、青く見えていた空に分厚い雲が流れ込み、切れ間から日が射している。

遠くから雷鳴が聞こえると、辺りは真っ暗になった。大きな雨粒が落ちてくると、瞬く間に滝のように降りだした。

雨宿りしないと。しかしこの辺りは開けた海辺で、何もない。

私は、無意識のうちにあの禍々しい廃墟の方へ走っていた。