あぁ、分かる!

厳しく育てられた反動で大人を困らせたいと思うんだけど、やることが幼稚で、せいぜい手を煩わせる程度の悪戯しかできない。

権力者を本気で怒らせるとどうなるか、身に沁みて知っているいるからだ。

生まれながらに放り込まれた鳥籠から、飛び出す勇気はまだ持てない。


「私も空くんみたいに自由になりたいな」

「勘当されたいってこと?」

「そ、そうじゃないけど、」


自分の好きなことを見つけて、好きな道を選んで。

自分だけの力で生きてみたい。

私に何ができるかなんて想像できないし、もしかしたら何もできないかもしれないけど。それでも、いつかは羽ばたいてみたい。

できれば、好きな人と一緒に。


「ささやかな夢なんです」


空くんと意外な共通点を見つけた嬉しさから、つい語ってしまってけど、だんだん恥ずかしくなってきて、言葉尻が小さくなっていく。

頬杖をつく空くんが、ふふっと小さく笑った。


「美波ちゃんは、好きな人がいるんだ。誰?」

「えっと」

「あれ、付き合ってるんだよね」

「知ってたんですか?」

「うん、壱哉から聞いた」


えー、だったら、どうして好きな人を聞いたの?

意地悪だなぁ、もう。