「ごめんね、これも何となく思っただけだから」

「いえ……その、」

「もしかして、本当にそうだったり?」

「はい、地方議員ですけど」


もともとは、祖父が地方議員をしていて。

その地盤を引き継ぐ形で、父が地方選挙に出馬したのが6年前。会社経営と兼業しながら2期目も当選し、任期はあと2年残っている。

でも、どうして空くんがそれを?

地元ではそこそこ名前の知られてる人だと思うけど、全国レベルで見るとそれほど有名ってわけじゃない。


「やっぱりそうかー。いや、うちもそうなんだよ」

「え!」

「っていっても俺はこんなんだし? とっくに勘当されてるけどね」


空くんは自虐するように、自分の髪の毛を指さす。

確かに政治家は本人だけならず、家族も品位と人格を要求される職業で、常に人の目に晒されていると思えと厳しく言われている。

私がもし金髪になって家に帰ったら、お父さんはひっくり返るだろうなぁ。


「美波ちゃんと話してるとさ、実家にいるような感じがしてさ。立ち振る舞いも綺麗だし、頭の回転も速いし、ただ良いところのお嬢様とは違うなって思ったからさ」

「家ではお転婆だって言われてますよ」

「例えば、習い事の時間に逃げ出したり、隠れてみたり?」

「ですです!」

「俺もよくやったなぁ、結局すぐ見つかるところにいるんだけどね」