「ただ、    」



大貴くんは21歳の大学生。

小さい時から何かと面倒を見てくれる兄貴的な存在で、今は私の家庭教師。

頭が良くて優しくて、私の小さな変化にもすぐに気が付いてくれる、まさに王子様。

そんな大貴くんに、私はずっと片思いをしている。

だけど、


「ねぇ、大貴くん」

「んー?」

「男の人って、好きでもない子と平気でキスできるの?」

「なっ、に、いきなり」


あらら、動揺した。

赤ペンを手の上でくるりと回した大貴くんは、軽い咳ばらいをしてから、私の頭を優しく撫ぜた。


「さては、紗英(さえ)に探りを入れるよう言われたな」

「まぁ、そんなとこ」

「他の奴がどうかは知らないけど、少なくとも俺は好きな人としかキスしないよ」

「へぇ……」

「なんだよ、その疑わしい目つきは」

「きゃぁ、やめてよー」


わしゃわしゃっと撫でくりまわされ、髪の毛がボサボサ。

昔からスキンシップの多い大貴くんは、この歳になっても遠慮せず頭を撫ぜたり、頬をつねったり、ハグだってするけど、キスはしない。

そうだよね。

だって、大貴くんの好きな人は私じゃないから。


「そういや、紗英、遅いな」

「もうすぐ帰ってくるんじゃない? さっきラインきてたし」

「そっか」


大貴くんの好きな人は、私のお姉ちゃん。

ふたりは恋人同士だ。