【お兄さん、怒ってた?】

【怒ってないよ】

【というか、お兄さんみたいな人って何?】

【お姉ちゃんの婚約者だよ】


ちなみに、博貴のお兄ちゃん。

と打とうとして止めた。

壱哉が博貴を知ってるかどうか怪しいし、幼馴染とはいえ異性が傍にいるのは良い気がしないだろう。私だって嫌だし。


【よかった】

【何が?】

【あんなイケメンが傍にいるなんて心配だなって思ったけど、ねぇちゃんの婚約者なら無いな】

【何言ってんの、無いよ】


好きだったんだけどね、というのも言わない。

大貴くんに抱いていた気持ちと、壱哉に抱く気持ちは全然違う。

胸がキュンとしたり苦しかったり、些細なことで踊ったり落ち込んだり、何かが零れそうになったり煮えてしまいそうになったり、軽くなったり重くなったり。

相反した感情に揺らされて、忙しいのなんのって。


【会いたくなってきた】

【もう? さっきも会ってたけど】

【さっきはさっき、今は今】

【なにそれ、かわいい】

【会いにきてー】

【分かった、10で分で行く】

【嘘だよ、冗談!】


思わずスマホを持ちあげて、ウロウロする。

慌てた私に届いたのは、胸が弾けるようなメッセージだった。




【美波が望むなら、いつでも飛んで行くのに】