「自分が何をしたか分かってるよな」
「い、壱哉、あの、これは違うの! 私はただその子と話がしたかっただけで」
「そんな嘘が通るとでも?」
ふん、と鼻を鳴らした壱哉は、ゆっこちゃんが手に持っていたスマホを奪い取り、その中身をチェックした。写真、動画。
さっきの必死で抵抗する私が映っている。
それらを全部消した彼は、ゆっこちゃんのスマホを踏み潰した。
「俺は嘘が大嫌いなこと、知ってるよな」
普段よりもずっとずっと、低い声。
顔が見えなくても彼がもの凄く怒っているのが伝わる声の低さで、「壱哉」と声を掛けると、彼は私の手をギュッと握った。
「……どうしてなの?」
ゆっこちゃんの体が震えている。
「どうして、私じゃなくてその子なの? 今までずっと壱哉の傍にいたのは私なのに! 壱哉のためなら何だってできるのに、どうして私じゃだめなの?」
「ゆっこ」
「絶対許さない、絶対に認めないから」
「確かに今までゆっこには色々してもらったよ、お前の気持ちを知っていながら利用するようなことをして悪かったと思ってる。ごめん。でも、それとこれは別だ。今後一切、美波に近づくな」
「なによ!」
大声をあげたゆっこちゃんは、ドンッと壱哉を突き飛ばし、私とすれ違う際にも肩を思いっきり当てて、出口の方に向かう。
そして、去り際に。
「あんたなんかじゃ絶対に壱哉を支えられない。見てなさいよ、いつか私にところに必ず戻ってくるから」
と、捨て台詞を吐いて部屋から出て行った。



