「は? 卑怯なのは、そっちでしょ。人の男を横取りしたくせに」

「横取りなんて、」

「大人しい顔してやることやってくれるじゃない。壱哉はね、私の物なの。ずっとずっとずーと、私だけの物だったの」

「壱哉は”物”じゃないよ。そういう言い方は、」

「清純ぶってんじゃないよ! あんたのそーゆーところ、マジでむかつく! 自分は何にも悪くないって顔しちゃって説教垂れてんじゃないよ」

「痛ッ!」


ガシッと髪を引っ張られて、目に涙が浮かぶ。

男たちに何か合図を送ったゆっこちゃんは、


「2度と壱哉の前に出られないようにしてあげる」


と笑いながらいい、私がいる反対側のソファに腰を下ろした。それからスマホをこちらに向ける。

まさか、動画を撮る気……?


「いいよぉ、始めて」


この時まで、私はゆっこちゃんに少なからず罪悪感を抱いていた。

壱哉と付き合い始めたことで、彼女を悲しませることになるのは分かっていたし、突然現れた女が彼の周りをうろちょろしていたら面白くないだろう。

もし逆の立場なら、相当憎いと感じるはず。

だから、彼女が私のところに来たら、恨み言のひとつくらい聞こうと思っていた。

でも、こんなやり方ないんじゃない?