誰かと通話したスマホをジーンズのポケットに押し込んだゆっこちゃんは、私の腕に自分の腕を絡ませ、ぐいぐいと引っ張って行く。

傍目から見たら、仲の良い女友達が腕を組んで歩いているように映るだろう。


「どこに行くの? そこのお店で、」

「えー? あんな人の多いところ嫌だよぉ、もっとゆっくり話せるところに行こ」


このとき、大声をあげるなり、その場でしゃがみ込むなりすれば良かったんだろうけど、ゆっこちゃんといずれは決着をつけなきゃいけないという変な思い込みがあり。

また、彼女ののんびりとした話し方に警戒心が薄らいでいた。


「そんな顔しなくても大丈夫だよぉ、壱哉もいるし」

「壱哉も?」

「そうそう、なんかバイトが急に早く終わったんだってぇ」

「そう、なんだ」


だったら、まず私に連絡くれてもいいのに。

やっぱり、ゆっこちゃんとは幼馴染なだけあって、特別な存在なのかなぁ。

あ、でも私と博貴だって仲いいし、お互い彼氏彼女が出来たからって、疎遠になったりしないもんね。

ましてや、ゆっこちゃんは壱哉のことがまだ好きなわけだし……。


「着いたよぉ」

「ここって、カラオケボックス?」

「そうだけどぉ?」

「……やっぱり帰る」

「は? 何言ってんの、あんた」



ゆっこちゃんの話し方が変わった。