病院から出た瞬間、強烈な木枯らしに体がぶるりと震えた。
ずいぶん寂しくなったケヤキの木が、道の向こうまで永遠続いている。
今年は紅葉らしい紅葉もなく、秋からあっと言う間に冬になってしまったなぁーと、信号待ちの間に思っていると、不意に後ろから肩を叩かれた。
「ちょっといい?」
声を掛けてきたのは、キャップを被った女の子だった。
いや、女の子っぽい恰好をしているだけで、声だって中性的だし、もしかしたら男の子なのかもしれないけど、私はその人物に心当たりがあったため、すぐに誰か分かった。
思っていたより、接触してくるのが早かったな。
それが、第一感想。
「やだ、そんな警戒しないで? あなたと話がしたいだけなの」
「話があるならここで」
「えー、どこかお店入ろうよ! 喉乾いちゃったし」
「じゃぁ……」
そこのファストフード店にでも、と言いかけた瞬間、すごい力で腕を掴まれた。
女の子とは思えないほどで、一瞬、思っていた人と違うのかな? とたじろいだけど、
「あ、もしもしぃ~? 私だけどぉ、今からそっち行くねぇー」
この喋り方で確信した。
間違いなく、ゆっこちゃんだ。



