「ただ、    」



「調子はどう?」

「あ! 美波お姉ちゃん! 今日も来てくれたんだ」


恭哉くんの入院は、思ったより長引いた。

当初の説明だと1週間くらいと言われていたけど、もう10日も過ぎている。だけど、恭哉くん本人はそれほど辛そうではなく。

むしろ、暇を持て余しているようなので、学校帰りに毎日顔を覗かせていた。

私にできる、壱哉の代わりなんてせいぜいこれくらいだ。


「じゃじゃーん、恐竜のペーパークラフトを持ってきたよ。一緒に作ろう」

「うわ! これやりたかったやつ! 嬉しい、ありがとう」

「喜んでくれて良かったー。どれから作る?」

「ティラノサウルス!」


恭哉くんは、本当に人懐っこい子で、こうして遊んでいるうちにすぐ仲良くなれた。

壱哉の話も時々してくれる。

寝相が悪いこととか、忘れ物をよくすることとか、運動会にお弁当を作ってくれたこと、部屋でギターを弾いて怒られたこと、お風呂で一緒に歌を歌うことなど。

どのエピソードにも、微笑ましい兄弟愛を感じられて、聞いている方が幸せな気持ちになれるくらい。

『お姉ちゃんは兄ちゃんの彼女なんだよね』

には、本気で照れてしまったけど。

兄ちゃんをよろしくと握手した手は温かかった。


「また、明日ね」

「うん、ばいばいー」