唇が触れた。
キスというものが、どういうものなのか、初めて教えてくれた、あの唇が、何度も求めるように甘く重なっては離れ、離れてはくっ付く。
心臓はドキドキを通り超えて、爆発寸前。
すき、すき、壱哉がすき。
優しく頭を撫ぜてくれる壱哉に倣い、私も彼の背中から首の辺りへと手を動かす。
けれど、なぜかバランスを崩してしまい、カツ、と滑稽な音がして歯と歯がぶつかった。
「痛ッ、ご、ごめ……」
「ふふ、痛ぇ、丈夫な歯だな、ふははは」
「ごめんってば、そんなに笑わないでよ」
「だってさー、すっごい男前な告白をしてきたと思ったら、キスは下手くそでさー」
「言わないで、恥ずかしい」
思わず顔を覆おうとした手を掴まれ、またキス。
「そういうとこ、」
「ん?」
「たまんなく、かわいい」
絶え間なく続くキスを受けながら、深みにハマっていくのを確信した。
どうしようもないくらい好きな人がいて、その人が気持ちに応えてくれる。これ以上の幸せなんてないんじゃないか。
恋は盲目だとよく聞くけど、まさにこれがそうと笑われてもいい。
ただ、ずっと壱哉の傍にいられることを強く願った。



