あ、もしかして笑った?

頬を撫でていた指に、きゅっとあがる口角が触れた。

いじらしい子だなぁ、それにとっても可愛い。

あの意地悪で捻くれ者の(私も人のこと言えないけど)壱哉の弟とは思えないな、と内心笑いながら恭哉くんとお喋りをしていると、


「恭哉!」


処置室のドアが慌ただしく開き、壱哉が中に入ってきた。


「倒れたってきいて、大丈夫か?」

「大丈夫、ごめんね兄ちゃん」

「何を謝ってんだよ、ばか」

「うん。謝ってもしょうがないから、早く元気になるよ。治ったら兄ちゃんのお手伝いするから待っててね」

「お前、何を言って……」


不思議そうに首を傾げる壱哉の向こう側で、恭哉くんがピースサインをする。

薬が効いてきたのか、さっきよりも随分楽そうだ。

良かったぁ。

安堵した私は、2人の邪魔にならないよう、そっと病室から出ることにした。

帰る時に「家族が来ました」と看護師さんに言えばいいよね、そうしたら先生からお話も聞けるよね。

もしかしたら、博貴が迎えに来てくれてるかもしれないし。

あ、そういやボーリングに行くはずだったのになぁ、今からでも行けるかな? そんなことを考えながら廊下に出て少し歩いたところ、


「美波」


後ろから腕を掴まれた。