消えそうな呟いた恭哉くんは、やがて、ヒクッ、ヒクッと声を漏らし始めた。

泣いているのだろう。

頬にそっと手を当てると、温かい水滴が指についた。


「大丈夫だよー、こんなことでお兄ちゃん怒ったりしないよ?」

「う、うう、そうじゃない」

「ん? 違うの? じゃぁ何がそんなに心配?」

「兄ちゃん、いっしょう、けんめい働いてるのに、ぼく、病気ばっかりで……うう、また入院になったら、お金、かかる」

「そんなこと、」


子供が心配することじゃないよ、と言いかけて慌てて口を噤んだ。

両親がいなくて、世話になるはずの叔父さんも行方不明で、バイトを掛け持ちしながら生計を立てている壱哉にとって、弟の治療代は相当な負担になるはずだ。

それを1番近くで見ていた恭哉くんに、気にするなという方がおかしい。

小学4年生、もう色んなことが分かる歳だよね。


「心配なのは分かるけど、恭哉くんが泣いているとお兄ちゃん悲しむと思うな」

「うう……うん」

「病気になったのは、恭哉くんのせいじゃないじゃないんだから」

「でも、」

「病気になったことを悔やんだって治らないよ? 今は元気になることだけを考えて、元気になったらお兄ちゃんのお手伝いをする。そうしたらお兄ちゃん、どう思うかな?」

「……喜ぶ?」

「そう! 喜ぶよ、きっと」