「ただ、    」



え、嘘! クラスメイト!?

驚いた私に、壱哉は、こっちの方が驚きなんだけど、と低い声。

どうも彼は私が気づいていて知らないふりをしているのだと思っていたらしい。

マジかよ、と呟いて髪を掻き上げた瞬間、ふわりとシトラスが香る。


「ごめん、私、人の顔が覚えられないんだ。苗字、聞いていい?」

「小湊」

「あっ、」

「思い出した?」

「あんまり学校に来ない人」


そうそうって、今度の声はさっきより柔らかい。

笑っているのかな。


「まぁ、休んでばっかだから、その程度の認識だよな。けど、びびったー。ライブハウスの前でオロオロしてる子がいたから、中に引き込んだのはいいけど、それがクラスメイトで、しかもしっかりライブを堪能しててさ」

「あ、そうだ。その節は助かりました。ありがとう」

「やばい奴に追われてたわけ?」

「そういうわけじゃないんだけど。ね、それよりどうして学校に来ないの? いつも病欠扱いになってるけど……バンド活動が忙しいから?」


あの歌声だもん、もしかしたらプロだったり?

またさっきの感動を思い出して、ちょっぴり興奮気味に尋ねると、壱哉は「いやいや」と手を振った。