えーと、救急車って110だっけ、それとも11……、思いっきり動揺してしまい番号が思い出せない私に、博貴が「119」だと教えてくれる。

その間も博貴は男の子に声を掛け続け、顔をタオルで拭いてあげていた。


「もうすぐ救急車が来るからな」

「……は、い」

「しっかりしろよ、もう1回名前言えるか?」

「…み、なと、きょう、や」

「みなときょうや?」

「こ、みなと」


こみなと? こみなとって、もしかして小湊?

男の子に、ちょっとごめんね、と断り、ランドセルを開けて中を覗くと、確かにそこには彼の言った通り、「こみなと きょうた」と平仮名で書かれた教科書があった。

他にも「小みなと」だったり、「きょう哉」と書かれたものも出てきた。


『小学生の弟がいるんだ』


もしかして、この子は壱哉の?









「肺炎を起こしかけていますね、しばらく安静が必要です」

「ありがとうございます」

「かかりつけの病院があるようですから、ご家族が来られてから、そちらに転院させましょう。連絡は付きましたか?」

「まだです」


あれから、駆けつけた救急隊員の調べによって、男の子が”小湊 恭哉くん”であることが判明した。

ランドセルの奥に保険証が入っていたらしい。