グッと壱哉が息を飲むのが分かった。

きっと彼は眉根に皴を寄せて怒っているのだろう。自分でも自覚している、今のは言い過ぎだ。だけど、どうしても黙っていられなかった。

胸の奥がザラザラしている。


「とにかく、もう誘わないで」

「あぁ、そうかよ、分かった。2度と誘わねぇーよ」


嘘だよ、そんなの微塵も思ってない。

なのに口から出てくるのは真逆の言葉で、苛立った声を返した壱哉は荒々しく教室から出て行った。

その様子を見ていた志穂ちゃんが「どうしたの?」と聞いてきたけど、「なんでもない」と答えるので精一杯だった。




「あほだな、小学生かよ」

「ほんと、そう思う……」


昼休み、たまたま教室にやってきた博貴に、元気がないことを見抜かれた私は、連れ出された中庭で全部話すハメになった。

恋愛相談とか、恥ずかしくて博貴にはしたくなかったけど。

さすが複数の女の子と親しくしているだけあって、聞き出すのが上手い。女心が分かっているというか、そうそうって肯定されていくうちに全部吐き出していたってわけだ。


「しかし、美波があいつをねぇ」

「壱哉のこと、知ってるの?」

「いや、1年の時、同じクラスだっただけだよ。っていっても、ほとんど学校来ないし、接点なかったけど」

「1年の時からそうなんだね」

「たまに、ふらっと来たなーと思ったら、女どもにキャーキャー言われやがって胸糞悪いったらなんのって」