「美波? どうかした?」
「ううん、なんでもない」
「お前、最近ちょっと変だぞ。何か悩みがあるなら、俺に言えよ」
すっとこちらに手を伸ばした大貴くんは、私の肩に掛けてあったタオルを掴みあげ、濡れている私の髪をゴシゴシ拭く。
懐かしいなぁ、子供の頃よくこうやって頭を乾かしてくれた。
優しくて、でも、ちょっと不器用で。
その心地良ささに浸っていると、背後から突き刺されるような声がした。
「何してるの」
振り向くと、やはりと言うべきかお姉ちゃんが腕組みをして立っている。
「あぁ、紗英。いや、濡れた仔犬がいたから拭いてあげてただけだけだけど、そんな怖い顔をしてどうした? やきもち妬いちゃった?」
「まさか、私が?」
「なぁーんだ、たまには妬いてくれると思ったのに残念」
「ふふ、私にやきもちを妬かせたいなら、ミスユニバースでも連れて来なさいよ。こんな子じゃなくて」
お姉ちゃんめ、大きくでたな。
でも、お姉ちゃんならミスユニバースとも渡り合えるかもしれない。
今の顔は分からないけど、お母さんにそっくりだと聞く。
私たちのお母さんは、とても美人だったから。



