きっと、あれだな。
もうすぐ大貴くんが来ることを自慢したかったんだろうなぁ。
お姉ちゃんは、私より4つも年上で美人で頭も良くて、大学のミスコンは毎年優勝しているし、友達も多く華やかな女子大生生活を送っている。
彼氏は某有名企業の跡取りで、親公認。
好きな海外旅行に何度も一緒に行っているし、日々の送り迎えは当たり前。
そんな絵に描いたように幸せな人が、いつもなぜか私にマウンティングを取りに来るんだから、不思議。
私なんて逆立ちしたって敵わないのに。
「おっ、美波。どうした? 髪の毛濡れたままで」
自室に戻るため廊下を歩いていると、大貴くんとばったり会ってしまった。
嘘をつく必要もないので、正直に答える。
「お姉ちゃんにバスルームから追い出された」
「はははっ、しょうがない奴だなぁ、紗英は」
しょうがない奴って、言いながら鼻の下デレデレ。
大貴くんって本当にお姉ちゃんのことが好きだよなぁ、私とお姉ちゃんが同時に海で溺れたとしたら、迷わずお姉ちゃんを先に助けるんだろうなぁ。
まぁ、恋人なんだから当然だ。
もやもやはするけど、納得もする。
でも、もし壱哉だったら?
私とゆっこちゃん、どっちを先に助ける?
ゆっこちゃんだったらって考えただけで、むかむかする。
というか、助けるどころか喋ってるのも嫌だし、腕を絡ませてるのも嫌だし、家に行くとか苛立ちしかないし、眼中に入れて欲しくない。
これが、やきもちってやつ……。



