「ただ、    」



「じゃぁ、またね」


外に出た私は、すかさずスマホを取り出した。

忘れないうちにメモしなきゃ。


「えーと、サリーちゃん、17歳……」


ストロベリー・ムーンというライブハウスで演奏するバンドのベース担当。身長、160センチくらい、華奢、金髪ツインテール。

フローラルの匂い、高めの可愛い声。

交換したラインのIDと、彼女の特徴を打ち込む。

それから、ここの場所をメモしておこうと、目印になるものを探すためスマホから顔をあげると。

濃藍色の空に浮かぶ綺麗な月が見えた。

今日は、すごく良い日だなぁ。

良いものに出会えた日だ。

浮かれモードも手伝い、スキップしたい気分で、スマホを空へと向けていると、


「おい」


路地の方から、さっき聞いた声が聞こえた。


「私?」

「あんた以外にいないだろ」

「あなたってさっきの、」

「つーか、まだしらばっくれる気?」


え、何が……。

ポカンとする私に、その人は苛立ったのか、大股でこちらに近寄り、後ずさる私を壁際へと追い込んだ。

頭1つ分、高い背、黒っぽい服装。

何よりこの声は、さっきの壱哉で間違いないはずなのに、雰囲気が全然違う。


「あの、」

「早坂 美波(はやさかみなみ)だろ? あんたの名前」

「え! どうして知ってるの?」

「どうしても何も、クラスメイトじゃん」