「ただ、    」



あれ、この声……。

もしかして、さっきの?


「なんだ、それならそうと早く言ってよー」

「悪い悪い」

「じゃぁ、今回は壱哉の連れってことでチケ代いいよ」

「なぁーに、偉そうに言ってんだよ。自分らのヴォーカルも見つけられない奴がさ」

「しょうがないじゃん、タカが急に辞めたからさ」

「言っとくけど、代役するのは今回が最後だからな」

「えー、いいじゃん、次も歌ってよ」

「やだね」


やっぱり、さっきのヴォーカルの人なんだ。

歌声とは少し違うけど、特徴のあるハスキーな声だ。

それからこの会話を聞くかぎり、サリーって子はベースを弾いていた子かな。唯一の女の子だったから、きっとそうだ。

ところで、”俺の連れ”っていうのは……。


「あの、私、チケ代払います」

「え、いいっていいって。ね? 壱哉」

「うん。というか俺が無理やり引っ張り込んだんだし」


あ、そっか、この人が私をライブハウスに。


「でも、すごく良い演奏だったし、また来たいから払います」

「わー! 嬉しい! なんていい子なの!」


く、苦しい。

サリーちゃんにギュッと抱きつかれ、はずみで1歩2歩と後退する。フローラルの女の子らしい良い匂い。

華奢で可愛らしい笑い声。

自己紹介をしたり、ライブの感想を伝えたりしているうちに、

気が付くと壱哉は居なくなっていた。