ライブが終わると辺りが明るくなった。
ここに入った時は暗くて分からなかったけど、学校の教室の広さにも満たない小さな部屋で隅にはカウンターテーブルがある。
ドリンクを飲みながら、談笑タイムのような和やかな雰囲気に包まれる。
そこに演奏を終えたメンバーがステージから降りて来た。
「サリーちゃん、お疲れ! 良かったよ」
「ほんと? ありがとう」
「特にヴォーカルがね。どこで見つけて来たの?」
「あぁ、あれはねぇ……」
なんか、すごい体験をしちゃったな。
突如として中に引っ張り込まれた私だったけど、ちゃっかりライブを堪能し、良いものを聴かせた貰ったと満足しつつ。
人の流れに沿って外に出ようとしているところで、「ちょっと」と声を掛けられた。
「ねぇ、あなた半券は?」
「え?」
「ライブの半券。入る時、貰ったでしょ」
「……いや、貰ってないです」
素直に答えると、困るんだよねぇ、と溜息。
「最近、多いんだ。お金払わずに入る人。だから、うちは半券を渡して帰る時に返して貰うようにしてるんだけど」
なるほど、そういうシステムなんだ。
「無いってことはチケ代払ってないってことだよね」
「すみません、今から、」
払います、と言おうとして、肩を掴まれた。
背の高い男の人が隣に並ぶ。
「悪い、サリー。こいつ俺の連れ」