嫌な奴なのか良い奴なのか、よく分からないけど。

気にしてくれていたんだ。

悪かったと素直に謝れるのは、良いところだよなぁ……意地悪だけども。

バイクの後ろに乗せてもらうという体験は産まれて初めてのことで、風を切る気持ちよさに思わず感動した。


「痛てて腰が痛ぇ、あんた力強いな」

「だって、振り落とされそうだったんだもん」

「だからって、あんな抱きつかなくてもいいだろ。あー、ほら痣になった」

「え、嘘!」

「うっそー」


こいつ……。

帰り道の途中、なぜか壱哉は遠回りをして海の近くでバイクを停めた。

それから胸の高さほどの防波堤を軽やかに登って、私に手を伸ばしてくれる。まさか無理だよ、と思ったけど、強い力で簡単に上がることができた。

腰を掛けて、またも感動。

目の前に広がる藍色の静かな海は、月明かりに照らされてキラキラ輝いている。


「きれい、夜の海って初めて来た……」

「は? 普通に来るだろ。あんた、どんだけお嬢なの」

「風が気持ちいいー」

「聞いてねぇーし」


まばゆい星の彼方へ溶け込むように進む船が、遠くに見える。

2羽のウミネコが仲良さそうに毛づくろいしている姿に微笑んでいると、別のウミネコが間に割り込んできて、それを見た壱哉が「修羅場だな」と声に出して笑った。