「もう帰んの?」
ライブハウスの出入り口脇にある路地で、壱哉が立っていた。
ダメージジーンズ、白のTシャツ、特徴のある声、うん、彼で間違いない。
「門限あるから」
「まだ8時だぜ? お嬢かよ」
「うるさいな」
「あ、そういうこと言う? せっかく送ってやろうと思ったのに」
「大きなお世話」
「……可愛くねぇーな、来いよ」
あ、ちょっと待ってよ、と言うより先に壱哉は私の手を掴んで、路地の奥へとぐんぐん引っ張って行った。
帰り道、そっちじゃないし、てか手首痛いし、1人で帰れるってば……っていう抗議はすべて無視され、駐輪場らしきところまで連れて行かれる。
「ん、このメット使っていいから」
「もしかして、バイクで帰る気?」
「他に何があるわけ? メットして歩いて帰るってか?」
「乗ったことないから無理、怖い」
「運転するのはあんたじゃなくて、俺だよ。いいからメット被れ」
なんて強引な……。
ぐいぐいっと押し込まれるようにして被らされたフルフェイスのヘルメットは思った以上に重たくて、頭がふらふらする。
それなのに、自分も同じようにヘルメットを被った壱哉は、頭突きをしてきて。
よろめいた私にこう言った。
「あんたの病気のこと、知りもせずに嫌な言い方して悪かったよ」



