「ただ、    」



すごっ……。

よく分かんないけど、すごいことだけは分かる!

指とかどうなってんの? どうしてそんな音が出るの?

何より、表情は見えなくても、楽しそうに演奏しているのが伝わる壱哉の演奏に、私はまたも惹きつけられていた。

輝いて見えるって、こういうことをいうんだ。


「壱哉のファンは多いよ~」


演奏の合間、サリーちゃんが私に耳打ちした。


「あくまでスタッフだからさ、いつ演奏するか分からないけど、何をやらしても上手いしカッコ良くてさ、壱哉目当てでここに通う子もいるくらいだよ」

「へぇ」

「なんだかんだ優しいし、顔もいいしね」

「顔いいんだ」

「あ、そっか。美波ちゃん、分からないよね」

「うん、でもすごーく意地悪なのは分かるよ」

「あはは」


初めの失敗はあったものの、ライブ自体は盛り上がったまま終わった。

今日はこのあともう1つ、別のバンドが演奏をするらしく、お客さんは残っている。

サリーちゃんも、本命は次らしく気合いのドリンクを飲むと言ってバーカウンターの方に向かった。

私は、そろそろ帰ろうかな。

時計を見ると夜の8時過ぎで、門限まであと1時間を切っている。

熱気の冷めやらないライブハウスから出ていくのは、多少名残惜しいけど、また来ようと自分に言い聞かせ、外に出た。

――と。