え、壱哉?
「ほらあそこだよ」ってサリーちゃんが指さす先には、ギターを肩に掛けて音響のチェックをしている彼がいた。
黒のダメージジーンズに、白のTシャツを合わせただけのシンプルな服装で、ロックテイストに決めている他のメンバーからは少し浮いているように見える。
どうしてかなって思っていると、
「バンドってね、なかなかメンバーを揃えるのが難しくて。どうしても集められないときは、ああやって壱哉が演奏してくれるんだよ」
「助っ人ってこと?」
「そうそう、ギター、ベース、ドラムにヴォーカル。なんでもできるよ」
「へぇ、そうなんだ」
バンド活動はしてないけど、演奏はするってことか。
勿体ないなぁ、あんなに歌が上手いのに。
照明が落ち、少しした後、ドラムの人がスティックを叩いて合図を出した。
どんな曲が始まるんだろう、わくわくする。
まずはお腹を底から響くようなベース音と、ドラムスとのリズム共演らしい。低音で繰り広げられる速弾きに自然と身体が縦に揺れる。
さぁ、いよいよ他の音も加わるか。
といったところで、ドラムの人が豪快に回したスティックが取り損ね、床に落とした。
「おおおおおおい、だっせぇーな」
「あはは、ごめんごめん」
「落とすくらいなら、かっこつけんな」
あちらこちらからヤジが飛び、ドラムの人が頭を搔きながらスティックを拾いにいく。そうしてる間もヤジは続き、シラケモードになったところで、
嫌な雰囲気を吹き飛ばすような、ギターソロが始まった。
壱哉だ。



