「ただ、    」



好きな人と結ばれるって、どんな気持ちなんだろう。

大貴くんに想われている、お姉ちゃんが羨ましい。なれるものなから、お姉ちゃんになりたい。

いつもの妹扱いじゃなくて、ちゃんとした恋人として優しく名前を呼ばれて、抱き寄せられて、髪を撫ぜて貰ってキスをして――。


キス……。

『口止め料』

不意にシトラスの香りが蘇る。

うー、どうしてこんな時にあいつのことを思い出してしまうの。

あんなの、ただのおふざけなのに。

なのに、なんで?





「あれ、来たんだ」

「あんたに会いに来たわけじゃない」

「またまたぁ、素直じゃないね」

「ほんとだってば!」


とはいえ、悶々とした気持ちを抑えられなかった私は、また例のライブハウスにやって来たのだ。今度はちゃんと入り口でチケットを買って中に入る。

ライブの時間には少し、いや、かなり早かったせいか人があまり居なくて。

特徴のある声で話しかけられてたお陰で、壱哉だとすぐ分かった。


「サリーちゃんにまた来るって言ったから」

「へぇ」

「なによ」

「別に。サリーならそこにいるじゃん、声掛ければ」

「え、どの子?」


壱哉が指さした方向には、2,3人の女の子がいた。

どの子も細くすらっとした体型で、髪の毛も明るい色をしている。ツインテールの子はいない。声も似たり寄ったり。

こういう時は名前を呼んで、振り返った子がそうなんだけど……。


「何してんの、まさかもうサリーの顔を忘れたとか」

「忘れたっていうか、」

「会ったの3日くらい前だぜ、記憶力無さすぎだろ。サリー!」