好きな人と結ばれるって、どんな気持ちなんだろう。
大貴くんに想われている、お姉ちゃんが羨ましい。なれるものなから、お姉ちゃんになりたい。
いつもの妹扱いじゃなくて、ちゃんとした恋人として優しく名前を呼ばれて、抱き寄せられて、髪を撫ぜて貰ってキスをして――。
キス……。
『口止め料』
不意にシトラスの香りが蘇る。
うー、どうしてこんな時にあいつのことを思い出してしまうの。
あんなの、ただのおふざけなのに。
なのに、なんで?
*
「あれ、来たんだ」
「あんたに会いに来たわけじゃない」
「またまたぁ、素直じゃないね」
「ほんとだってば!」
とはいえ、悶々とした気持ちを抑えられなかった私は、また例のライブハウスにやって来たのだ。今度はちゃんと入り口でチケットを買って中に入る。
ライブの時間には少し、いや、かなり早かったせいか人があまり居なくて。
特徴のある声で話しかけられてたお陰で、壱哉だとすぐ分かった。
「サリーちゃんにまた来るって言ったから」
「へぇ」
「なによ」
「別に。サリーならそこにいるじゃん、声掛ければ」
「え、どの子?」
壱哉が指さした方向には、2,3人の女の子がいた。
どの子も細くすらっとした体型で、髪の毛も明るい色をしている。ツインテールの子はいない。声も似たり寄ったり。
こういう時は名前を呼んで、振り返った子がそうなんだけど……。
「何してんの、まさかもうサリーの顔を忘れたとか」
「忘れたっていうか、」
「会ったの3日くらい前だぜ、記憶力無さすぎだろ。サリー!」



