「そんなんで納得できるわけないじゃんね?」

「って、俺に言われても困るけど」

「だって、一方的だよ? しかも、勝手に調べるなんて」

「まぁ、兄貴にしては強引だよな」

「理由ってなんだろ?」

「だから、俺に聞かれても知らねぇーよ」


素っ気ない言い方、冷たい奴め。

昼休み、食堂に向かう博貴を見つけた私は、彼を屋上に誘い、昨日の話を聞いてもらった。話といっても愚痴だけど。ほぼ愚痴だけど、同情してくれてもいいじゃん。


「ま、正直いって複雑そうな家庭だし、相応しくないのは明らかだろ」

「付き合うのに家柄とか関係ないのに」

「そんなこと青くさいこと言える家じゃないだろ、お嬢様」


嫌味な言い方だな。

紙パックのカフェオレを飲んでいる博貴は、私の膝の上に置いていたテキストを取り上げ、パラパラと捲る。

期末テストは明日からで、みんな最後の追い込みとばかりに休み時間も惜しんで勉強してるのに、彼は余裕綽々。

大貴くんに負けず劣らず頭が良い。


「別にさ、お姉ちゃんがいるんだし、お父さんの跡は大貴くんが継いでくれるんでしょ? だったら、私は不要だよね」

「駆け落ちでもするか」

「できるならしたい……」