「途中まであってるよ、ここの公式を当てはめて、」
「うんうん」
「こっちに移したら、答えは?」
「あ、分かった!」
書き込んだ答えに、花丸をつけてくれる。
他に分からないところはないか? とテキストをページを捲った大貴くんは、壱哉が書き込んだ字を見つけ、それを指でなぞった。
「面白い解き方してるな、これ、美波の字じゃないよな」
「壱哉が書いたの」
「あぁ、彼氏か。一緒に勉強したのか?」
「うん」
何だかちょっと気恥ずかしいな。
まさか彼氏の話を大貴くんにする日が来るなんて思ってなかったし、私、本当に大貴くんを兄として見れるようになっただなぁ。
それもこれも壱哉に出会えたからかなって、そんなことを考えていると、私の頭を撫でていた大貴くんが言いにくそうに切り出した。
「そのことで話しがあるんだけど、」
「なに?」
「彼氏のこと調べさせてもらったよ」
「え!」
「結論から言う。あの男はやめた方がいい。いや、やめないと駄目だ」
「そんな、どうして?」
「理由は教えられない」
何よ、結論からって。調べたって何を? どうして? やめないと駄目とか。
勝手に言わないでよ。
その上、理由は教えられないなんて――――!
言い返したいことが色々あり過ぎて、逆に言葉にならない。
それをどう受け取ったのか知らないけど、大貴くんは改まった声でこう言った。
「とにかく、おじさんにバレる前に会うのはやめるんだ」



