「あれ? なんで違うの」


解けたと思った問題の答えが違っていて、首を傾げる。

これは確か昼間に教えてもらったやつの応用問題で、実に単純だと高をくくったのに、思わぬ難題じゃないかと舌打ちしながらテキストを開いて。

書き込まれている壱哉の字を、爪で弾いた。


政治家を憎んでいるってどういうことだろう?

嫌いとか苦手とか胡散臭いとかじゃなくて、憎い。

それって、理由があってということだよね。何かされたってこと?

あのあと、壱哉にさりげなく聞いてみたものの、彼は話をはぐらかすばかりで、その「理由」は教えてくれなかった。

こちらの問題も分かりにくく、難題だ。


空くんだったら、教えてくれるかな。

今度会った時に聞いてみよう。

それで、こっちの問題は……と、再びテキストに目線を落としたところで、自室のドアをノックされた音が聞こえた。


「美波、ちょっといいか」

「あ、大貴くん? ちょうどいいところに!」

「どうした?」

「ここ、分からないの。教えてー」


今日は家庭教師の日じゃないし、お姉ちゃんも友達の家でお泊り会だから、大貴くんは来ないと思っていたのに。

どこ? って優しく聞いてくれる彼にテキストを差し出すと、ものの数秒で解いてくれた。