「あっ」

レインが小さな声と共に顔をゆがめた。
飯島はそれを見逃さず、厳しい顔つきでレインを見た。

「きちんと記憶を封じたんだろうな?」

レインは泣きそうな顔で飯島の方へ首をまわした。

「もしかしたら、鍵をかけ忘れたかもしれない・・・すいません!!」

飯島は今にもまた怒鳴りだしそうだった。しかし、冷静な声で淡々と言った。

「記憶をいくら封じても鍵をかけなければ、そのうち解けてしまうだろ」
飯島は指をくいっとまわした。

はっとして、あたしは手当てをしてもらったばかりのおでこのテープをはがす。そして、そっと手をあてた。
数分前のできごとだったはずなのに、血がとまるどころか、傷が綺麗に消えている。

「あの・・・」

あたしは確認するようにおでこを触って、飯島の顔をみた。

この人は人間じゃないってことか。

いや、映画で泣きすぎて疲れて、熱がでたのかもしれない。

というか、高校生にもなってファンタジーなんて・・・

「もう、いい。下がれ。」
飯島はレインにむかって吐き捨てた。
レインは最後まで頭を何度もさげて、部屋をでていった。



「・・・」

「・・・」

「・・・あの、」

「・・・」

「人間じゃないんですか?」

飯島は少し間の抜けた顔をした。

「直球だな」

「・・・」
自分でも、何を言っているんだ。と思った。あたしは現実主義者だ。オカルトなんて絶対に信じない。

「直球に答えると、質問の答えはイエスだな」