「そうだっけ」

佳織は眉をひそめながら、あたしの顔をしげしげとながめた。

「記憶喪失?書類届けたの、忘れてないよね?」

書類・・・書類・・・なんだったっけ・・・
あ、 茶封筒の話か。

「ああ!なんか茶封筒もってったね!」

「『なんか』って・・・」

佳織はあたしの言動にかなり不信感を抱いているらしかった。

「この後、いってみようか?飯島尚樹の家。あたし、なんで登校拒否してるのか、聞きのがしたし」

「はぁ?今から?突然?いや、それはねぇ」

「大丈夫だよ。よし、行こう。待ってて。これ買ってくるから」

なにが『大丈夫』なんだ・・・。なんでも根拠なしに大丈夫だと言える佳織はすごいとも思うけど。

佳織は会計を済ませると、いつもよりも早いぺースで歩いていった。
あたしは、その後を小走りで追う。
ただでさえ歩くのが早めな佳織が、更にペースをあげたら普通には追いつけない。


ピンポーン

一度も立ち止まらず歩き続けて20分。
佳織は、インターホンを早速押していた。

「はい。飯島です。」

インターホンから聞こえた声は、低めの男の声だった。

「吉川です。用があったので来ました。」

用なんてないじゃん!とか思いつつ、あたしは静かに家を見渡していた。

なんだかなぁ。確かに来たことはあるんだけど、何故か記憶がうっすらとしかない。
そんなにインパクトのない家だったけ?

「・・・・・どうぞ」

少し迷ったように間があいて、鍵が開くガチャという音がした。
佳織がドアノブに手をかける。

「おじゃましまーす!!」