「じゃあ行ってきます。」


「薬は持ってるの?」


「持ったよ。昨日のうちに鞄にしまったから。」



8時。

私は食事を終えて身支度を整えると、玄関の扉を開けた。



「行ってらっしゃい!気をつけてね。」



台所で食器を洗っていたお母さんは、エプロンで手を拭きながら見送りにきてくれる。


優しいけど、心配症なお母さんだから、なるべくお姉ちゃんと同じ学校には行ってほしくないんだと思う。

進路を変えた時もお母さんは何も言わず応援してくれたけど、その夜不安そうに一人で夜遅くまで起きていたのを知っている。




手を振って、家から出た後。



「………あの子を、守ってあげてね…。美里…。」



お母さんが、そう呟いて立ち尽くしているとは知る由もない。