溶けないうちに堪能する。
「さささ、先輩も早く食べて」
「うん」
「ん?この味なんだろう?」
見た目はクリーム色でレモンにしては薄いのかな。
味わいながらゆっくりと舌で溶かす。
「…確かに君の表情を読んで、プレミアムジェラートを頼んだよ。君のためでもあったけれど、君の喜ぶ顔が見たかった。それってさ、」
先輩がスプーンを置いて笑った。
「結局のところ、俺のためってことかな」
「黒瀬先輩…」
「家庭環境のせいか、人の顔色を伺うことがいつの間にか癖になっている。でも君の前での俺は幾分か素直だと思うんだけどな」
突然なにを言い出すの?
「…そういうこと言われると、黒瀬先輩が私に気があると思い込みますよ。私はあなたに惚れてるんですからね!大好きなんですからね!」
恋から、友情へーー気持ちを切り替えることはこんなにも難しい。
私はこれからもずっとずっと、黒瀬先輩のことを想い続けて生きていくのかな。
想いは色褪せるなんて言うけれど、この気持ちは時間に解消してもらえるほど軽いもんじゃない。