たっぷり盛られたフルーツ特有の甘酸っぱさが、程よい甘さを演出している。
「美味しい」
大きなスプーンで頬張ると、黒瀬先輩も同じように大きな口を開けて食べた。
「うん、美味い」
「…先輩、私がプレミアムジェラートを食べたいってよく分かりましたね」
「俺も食べたかったから」
「嘘でしょ。鋭すぎます」
メニューを見る私を観察していたのだろう。
こちらの気持ちを汲んでくれて、ありがたいけれど。嬉しいけれど。
「黒瀬先輩、私の前では我慢したり譲ってくれたりしなくて良いですよ。気を遣わず、たくさんワガママを言ってください」
スプーンを持つ先輩の手が止まる。
「そりゃぁ嬉しいですけど、気遣いも大切ですけど、なんでも言い合える関係が良いです」
「ありがとう」
そのありがとうは、微笑みながらではなくどこか重かった。
ああ、きっとーーこれが黒瀬先輩の心からの"ありがとう"なのだ。