素早く立ち上がった雅美は黒瀬先輩の前に立った。


「この子は本気であなたが好きなのに、中途半端な態度をとることを止めてよ。友達なんて馬鹿馬鹿しいこと言ってるけど、この子があなたを見る目は恋してる女の子そのもので。あなたがそれを気付いてないはずがーー」


「雅美!」


初めてお昼ご飯を奢ってもらったあの食堂と同じ空気になりそうで、慌てて口を挟む。


「もういいから、座って!」


私が一方的に黒瀬先輩のことが好きなだけなのに、どうして黒瀬先輩が責められなければいけないのだろう。


雅美の肩を掴み、自分の隣り座らせる。
これ以上は何も言わないでと、肩に力をかけて。



「それで?君は俺が彼女と付き合うことになれば満足なの?」


黒瀬先輩の言葉に、固まる。



「どういう意味?」


私の手を払いのけた雅美が問う。





「彼女から"ソレ"を提案してくれたら、俺は受け入れるよ」



ーーソレ?


ーー受け入れる?


なにを?誰が??






「この子と付き合うってこと?」



雅美が代わりに聞いてくれたけれど。


その答えを聞きたいような、一生聞きたくないような複雑な心境だ。