「黒瀬良斗の隣りにいる人間は、劣等感を味わう。君が良斗のことしか見ていないようにね。俺、合コンに行けばモテモテなのに?校内で良斗と並んで歩けば、多数の視線は俺を通り越して良斗に行くんだ。俺の言ってること、分かるよね」


「まぁ…」


「分かっちゃうんだ、酷いなぁ」


ヘラっと笑った相馬先輩。

容姿の良さや、完璧な佇まい、学年トップを争う頭脳と運動神経。加えて優しく、それでいて芯の強さを感じる性格。

黒瀬良斗にはカリスマ性がある。


「あいつの隣りに立つということは、少なからず劣等感を味わうことになる。こっちも辛いけど、良斗は良斗で人の妬みや競争心、そういう人間の嫌な部分?をたくさん見て来たと思うよ。誰よりも聡い奴だしなあ」


あれ?
相馬先輩と真面目な話をしてる?


「君もそうでしょ」


「え?」


「私なんか、って思って。あいつの傍に居るんじゃないの?」


「それは…」


図星だ。

吊り合わない。
最初からそう思って、告白した。



「そんなんじゃ、春嶋ちゃんは一生、良斗の恋人どころか友達にもなれやしないよ」


あれ?
なにも考えていない人だと思った。

けれど、今、この瞬間、
相馬希人の目は真剣だ。

口元は笑っているのに、その目は鋭い。