そっと手を差し出す。


「私と、友達になってください」


私には仁くんがいる。
恋人は仁くん、ただひとり。


でも友達なら、許されるよね。



「いいよ」


黒瀬先輩はにこやかに私の手を取った。


「改めて、宜しくね」


優しく握ってくれる。


深く追求しない。
そこが先輩の優しさで、今は甘えることにした。



「ポーチありがとうございます。まさか私の分まで買ってもらえてたなんて、本当に感激しました。あ、食事代!半分払います!」


「大丈夫だよ。俺の気持ち、受け取っておいて」


「でも…私、デザートまで食べてしまって…」


先輩が歩き出したので、後ろに続く。


離れてしまった手に寂しさを覚える。


「あ、じゃぁ今日の昼食は奢らせてください!」


黒瀬良斗。
君は今日から、私の"友達"です。