英語準備室の前に、黒瀬先輩と鈴宮先生はいた。
鈴宮先生はピンクのワイシャツとタイトスカート姿で、首元には高そうなネックレスが輝いている。高いヒールを履きこなした大人な女性の風貌だ。
「すごく助かっちゃった。ありがとう」
「いいえ。では失礼します」
「待って」
私の存在に気付かず、鈴宮先生は黒瀬先輩の手を引いた。
「今夜どうかしら?」
「…なにがですか」
「食事でも」
「あなたは凝りない人ですね」
雲行きが怪しい2人の会話に、思わず柱に隠れる。
待って!
どう見ても教師と生徒の会話では無いんですけど?
「勉強をみてあげようと思ったのよ。教師として」
猫なで声で、鈴宮先生は黒瀬先輩の腕を卑しくさする。
違う。
教師と生徒の距離感ではない。
それに今の鈴宮先生は女の顔をしている。
「あのっ!」
たまらずに、柱から飛び出した。



