私のために腹を立ててくれる唯一の親友の肩に手を置く。
「心配かけて、ごめん」
「このまま何もしないなんて、許さないから。黒瀬先輩にウザがられる程に付き纏って、嫌われろよ」
「その手があったね」
「全くの他人に戻る必要はないよ。菜子の心がそう簡単に変わらないのなら、諦めて、もっと先輩といられる限られた時間を大切にしろよ」
「うん…」
「その代わり1年後、きっぱり先輩と会うことをやめろ。連絡もとるな。それが時間を与えてくれた仁への誠意だろうが」
私の気持ちを分かって猶予をくれた仁くんの寛容な心。
春が来たら、先輩のことを忘れなければならない現実。
「楽しい思い出を作っても良いんじゃない?まだ2年になって3週間しか経ってないんだよ。残り11ヶ月、どうやって過ごすか決めたら?辛気臭い顔をして影でこそこそと先輩を見てるより、強引にでも隣りに居た方がいくらかマシじゃないの」
全て言い切って満足したのか、雅美はマスクをつけて地面に寝転がった。
「ありがとう、雅美」
同じように隣りに寝転がり、直射日光を浴びる。
今日のお昼、先輩の元へ行こう。
ポーチのお礼もまだ言えてないから。



