思わず顔を上げる。


黒瀬先輩は私を見ておらず、頬杖をついて窓の外を眺めていた。


「君は"付き合って欲しい"と一度も言わなかった。最初からフラれる覚悟でいたんでしょ。俺にフラれるためにデートに誘って、君は俺との未来なんて考えたこともないよね」


図星だった。


付き合ってください?
ーーそんないい加減な言葉は言えない。


私はあなたとは付き合えない。
絶対に、付き合えないから。



「悪いけど…付き合うつもりもない君に向けた別れの言葉なんて、あるはずないよ」


「先輩…」


「君の好きは、確かに俺の心に届いたよ。同時に、それ以上のことを君が望んでいないことにも気付いてた。何故、そんなに俺にフラれたいのか知らないけど…俺は優しい男でないからこれ以上、君に伝えられることはない」


きっぱり言い切った先輩は、私の気のせいかもしれないけれど悲しい目をしていた。


「今日は買い物に付き合ってくれて、ありがとう。これ、君に」


「え?」


「それじゃぁ、バイト行くね」


机の上にリボンのラッピングをされた紙袋を置き、伝票とともに先輩は立ち去った。


止める言葉は出なかった。